リンパ系疾患

フランスでは、リンパ浮腫患者は15万~20万人にのぼります。リンパ液の循環不良に起因して身体の一部の組織に起こるこの腫れは、生活の質に著しく影響を及ぼし、局所感染を引き起こす可能性が高くなります。弾性着衣の使用は、こうした疾患の治療における重要な鍵です

リンパ系は、リンパ液を循環するリンパ管とろ過器の役目を果たすリンパ節からなるネットワークです。リンパ液は、免疫細胞や栄養素、細胞の代謝から生じた老廃物などとともに体内を循環します。

 

リンパ浮腫はなぜ起こる?

リンパ浮腫は、リンパ系の機能不全によりリンパ液がうまく循環しない、あるいは停滞した場合に起こる疾患です。体質的な異常により発症する場合や、まれに遺伝性疾患が原因で発症する場合があります。これは原発性リンパ浮腫と呼ばれます。一方、がん手術の後や感染症によっておこる場合もあり、これは続発性リンパ浮腫と呼ばれます。皮下組織にリンパ液が溜まることで、その部分に腫れを引き起こします。リンパ浮腫は主に四肢(腕と足)に現れますが、頚部や生殖器などの他の部位に及ぶこともあります。

 

進行度と治療

リンパ浮腫は慢性疾患で、進行度は以下の3段階に分かれています。

  • 第I期:むくみは局在しており、患肢を上げることで消退
  • 第II期:むくみが患肢全体に広がっており、挙上しても消えず、皮膚がひだ状になり変化が現れる
  • 第III期:患肢が肥大し、動きにくくなり、感染性皮膚疾患の合併症を伴う

 

対処法は?

リンパ浮腫ケアの目的は、罹患領域における体積の増加を防ぎ、可動性を回復し、免疫系の機能不全に起因する感染性合併症の発症を予防することで、包帯の装着と理学療法士による徒手リンパドレナージ(うっ滞した部分からのリンパ液排出マッサージ)、弾性着衣の着用、エクササイズ、スキンケアが含まれます。これらの方法が奏功しない場合、まれに外科手術が適応されることがあります。

出典

HAS : La compression médicale dans le traitement du lymphoedème, 2010

International Lymphoedema Network : Best Practise for the management of lymphoedema, 2nd edition, Surgical Intervention : A position document on surgery for lymphoedema, 2012

Vignes S, Blanchard M, Yannoutsos A, Arrault M : Complications of Autologous Lymph-node Transplantation for Limb Lymphoedema. Eur J Vasc Endovasc Surg Jan 2013

Vignes S, Activités physiques et lymphœdèmes des membres. Sang Thrombose Vaisseaux 2011 ; 23, no 5 : 225-8

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